NBA1年目にわかった14のこと

Kevin C. Cox/Getty Images

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(1) 少しくらい、ビビったっていい。

 言いたいこと、わかるだろ? ルーキーは、ついクールなふりして、まわりのことが全部当たり前であるかのように行動してしまいがちだ。でもわかったなかで1つ大事なことは、少しだけならいいっていうこと。少しだけ、いまここにいられることを喜んだっていい。

 たとえば、ドラフトで指名されたとき『マジで? 指名されちゃったよ』と思ってもいいっていうこと。サマーリーグの最初の試合で、NBAロゴが入ったコートに立ったときに鳥肌がたってもいい。

 そう感じたからといって、ビクビクしているように見えるわけではない。僕に言わせれば、それはわかっているということの証だ。自分が経験しているその瞬間がどれだけ意味があることかをわかっているということ。

 これは夢でもなんでもない、現実だということを。

(2) ただし、ビビり過ぎたらだめだ。

 サマーリーグ中のある夜、試合が終わった後に、何人かの選手がどこかに食事に出かけようとしていた。「タイ、君も来るかい?」と聞かれた。

 わかってほしいのは、そのときの僕はまだ19歳だったということだ。大学での規則正しい生活から数カ月しかたっていなかった。大学では規則は絶対だった。

 夜もだいぶ遅かったし、出かけようとする彼らに聞いたんだ。「えっと……ホテルの外に出てもいいのかな?」とね。

 みんな、大笑いしていた。

 そう、僕はまさにルーキーだった。

「ブラザー、君はもうNBAにいるんだぜ。そうだろ? もちろんホテルの外に出てもいいに決まっているさ」

(3) 期待はお互いさまだ。

 よく、僕はコート上ですごく自信たっぷりに見えると言われる。(たぶん、それは僕が実際にコート上で自信を持っているからだ。)

 でも、本当に僕を駆り立てているものは自信ではないんだ。昨シーズン、僕のプレーがひとつレベルアップできたのは、自分がどれだけいい選手かわかっていたからじゃないんだ。自分がどれだけ大きな期待をかけられているかがわかっていたからだ。

 昨シーズン、僕がそこそこ成功できたのは、そのおかげだった。まず、自分でもオールスター選手になってみせると思っていた。それと、ウチの球団社長のパット・ライリーの存在。彼がドラフト指名選手を紹介する記者会見で、僕がオールスターになると言ってくれた。

 ものすごく嬉しかった。自分で自分のポテンシャルを期待しているだけでなく、自分のポテンシャルを信じてくれている組織にいるということが嬉しかった。

 こう考えてみてほしい。パット・ライリーを失望させるやつになりたいかい?

David Dow/NBAE via Getty Images
David Dow/NBAE via Getty Images

(4) ジミー・バトラーは勝者だ。

 昨シーズン、そのことをわかったのは僕だけではなかったようだね。世界中が知ることになった。でも、僕からしたら、みんながそのことを理解するのにこんなに時間がかかったなんてどうかしているよ。

 ジミーは、僕が知る限り誰よりも一番のハードワーカーだ。間違いない。

 これはリアルなことだ。

 彼は、目標のためならバケツ何杯もの汗を流す。次の考えを、できるだけ丁寧な方法で表現してみよう。言ってしまえば、彼が流す汗の1滴1滴に匹敵するだけのことをやるつもりがないんだったら、ここから出ていけ、ということだ。ヒートのカルチャーはジミーにぴったりだ。何しろいまや彼が率いるロースターはみんな、努力で他の人に負けるのは絶対嫌だと思っているような連中だから。彼がこのチームにいるということは、こういうことだ。ときどき負けることはあるかって? そうかもしれない。でももし僕らに勝つつもりなら、まずは僕らをぶっ潰さなきゃならない。

 ヒートは、ジミーのチームだ。

(5) リーグパスは最高だ!

 みんな忘れているかもしれないけれど、僕はコロナの影響でのリーグ中断前から、足首の故障で休まなくてはいけなかった。チームと一緒に遠征に行くことができず、家にずっといなくてはいけなかった。試合から離れているのは嫌でしかたなかった。それで、少しでもバスケットボールと身近でいたいから、テレビのNBAリーグパスで試合を見始めた。

 笑えるのは、テレビをつけるときには、頭の中で「さて、ちょっとのんびりして、1試合か2試合ぐらい観ようかな」と思っているんだ。2時間ぐらいリラックスして、リーグでは何が起きているかを見ようと思ってね。でも、僕はそんなタイプではないようだ。リハビリの装具を履いてソファにいても、だ。リーグパスのチャンネルを変えながら、いろんな試合を見始めるのだけれど、気づいたら、研究したい選手を集中して見ている。

 たとえば、選手としてのアプローチも含めてあらゆる面でお手本にしているデビン・ブッカーのプレーをよく見ている。

 あるいは、すでに世界で最高のオールラウンド・ガードの一人だと思っているルカ・ドンチッチのプレーもよく見る。

 それか、ジェームズ・ハーデンだ。彼はスコアラーの目線から見たとき、ガードのポジションでは史上最高の選手かもしれないと思っている。

 そういった選手たちだ。

 彼らがやっていることを見て、頭の中にメモをとるんだ。

 彼らの視点から、試合の流れを見るようにしている。

(6) サイクリングはイカしている。

 コロナ禍で選手たちが“バブル(安全圏)”の中で釣りをしていた話は、みんな知っていると思う。バブルでのゴルフについての話もたくさん聞いた。釣りやゴルフは最高さ。でも、もっといいことを教えようか。バブルの中で一番イカしていたのはリゾートのまわりを自転車で走ることだった。少なくとも、僕の経験ではそうだった。よかったのは、1周が1.3マイルの距離だったこと。仲間たちといっしょに周っても、飽きることがなかった。それでいて、遠すぎて最後まで走れないということもない。イケてるアクティビティだと太鼓判を押すよ。

 僕の“サイクリング用”プレイリストを紹介しよう。

(7) スポにはわかっていた。

 ウチのヘッドコーチ、エリック・スポールストラは、僕らをどう導けばいいのか本当によくわかっていた。そのことを自慢したり、ひけらかすことはなかったけれどね。感傷的にさせるような、奮い立たせるようなスピーチもなかった。何かを確約したりもしなかった。でも、ペイサーズとのシリーズのゲーム1の前にコーチが僕らに話をしていたとき、その様子を見ているだけでわかった。独特の落ち着きっていうのかな。言いたいこと、わかってもらえるかな? 彼にはすべてが見えている、そんな感じだ。みんなが集中して聞いている中で、コーチは僕らの進むべき道について語ってくれた。ミーティングの中で、コーチは僕らが苦手とするような相手はいないと言い、僕らにできないわけがないと話していた。

 ただ、それだけだった。

 大言を吐くわけでもなく、映画のようなドラマチックさもなかった。ただ、コーチが僕ら選手とペイサーズの選手を見て、僕らのほうに分があると思ったんだ。

(8) 特別なベテランたちがいて……そしてユドニス・ハスレムがいる。

 ベテラン選手たちの中でも特別なベテランたちがいる。去年のあの環境にいられたこと、このカルチャーの一員になれたことはとても恵まれていたと感じている。ただ単に恵まれていただけではない。僕のNBA1年目に、大ベテランであるユドニス・ハスレムがチームにいたことは、恵まれていたという言葉だけでは言い表せない。まるで宝くじに当たったようなものだ。そのうえ、このオフシーズンに再契約してもう1年いてくれるだって? まるで宝くじに2回当たるようなものだ。

David Dow/NBAE via Getty Images
David Dow/NBAE via Getty Images

(9) ミルウォーキー・バックスを倒した理由は、単純なことだった。

 プレーオフ・カンファレンス・セミファイナル、彼らとのゲーム1に勝ったからではない。ゲーム2に勝ったからでもない。ゲーム3に勝ったからでもなかった。

 違うんだ。

 僕らが彼らを倒した理由を知りたいかい? それはゲーム4に負けたことだった。

 不思議に聞こえるかもしれないけれど、僕にとっては、筋が通っていることだ。僕はそういう考え方をする。ゲーム4の終わりを思い出してみてほしい。悔しい負けだった。相手チームのヤニスは欠場していて、僕らはシリーズを終わらせるチャンスがあった。でも、彼らは信じられないようなシュートを何本か決めてきて、オーバータイムに持ち込まれた。オーバータイムでは1ゴール差で負けた。

 あんな負け方をしたら、そこから終わりに向かってしまうようなチームはたくさんある。どのシリーズについて言っているか、わかるだろ? 下馬評が低いチームが勝つ絶好のチャンスがあって、それを活かせなかったら……すべては悪いほうへと向かう。

 僕らのチームが特別なのは、単にそうならなかったというだけでなく、まったく反対の反応をしたということなんだ。

 僕らはゲーム4に負けた後、ゲーム5に向けて燃えていた。すぐにでも戦う準備ができていた。冗談のように聞こえるかもしれないけれど、いたって大真面目だ。もしあの夜にすぐもう1試合やらせてくれたら、やっていた。本気だ。やらせてもらえるなら、ダブルヘッダーで試合をしていた。それだけで僕らがどんなチームかわかるはずだ。

 あれだけ大きな試合の、悔しい負けを受け入れることができるのはどんなチームなのかを想像してほしい。僕の仲間の答えは、「もう1回やってやろうじゃないか」だった。凄まじい光景だ。そして、まさにプレイオフでの僕らは、凄まじい気迫を見せていたんだ。

(10) ファンの前でプレーできないのは寂しい。

 これには付け加えることは何もない。とにかく、寂しい。

(11) 37点取れるほど信頼してもらえたことを誇りに思う。

 ボストン・セルティックスとのカンファレンス・ファイナルのゲーム4については、そう考えている。僕にとってあの試合がどう特別だったのか? それは、ジャンプシュートがよく決まっていたからではない。それよりは、あのときの状況だ。

 カンファレンス・ファイナルで、2勝1敗となっていた。

Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images
Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images

 3勝1敗になる(つまり、NBAファイナルに王手だ)のと、2勝2敗のタイになる(しかも流れは彼らのほうに行ってしまう)のは大きな違いだ。

 とても大事な局面だ。

 それが大きかった。2月のレギュラーシーズンの試合で、最初のシュート2本を決めた後に、好きに打っていいと言われたわけではない。シーズン中で最も重要と言っていいような試合で、コーチが僕を信頼してくれた。

 シーズンがかかった試合で、チームメイトたちが言ってくれたんだ──今夜、タイラーは調子がいいから、彼にやらせよう、とね。

(12) どうやら、プレイオフ中にタイラー・ヒーローのミームが盛り上がったらしい。

 僕の画像を面白おかしく加工したミームが、SNSでバズってたな。あれはクールだった。唸った顔のやつもいいけれど、僕が気に入ったのはこれだ。

 ありがとう、ミーム・アーティストたち。

(13) もしNBAがビデオゲームなら、レブロンはまさに“ラスボス”だ。

 それが、1シーズン目を終えての僕の結論と言っていいだろう。

 そうだな……確かに僕らは健闘したけど優勝することはできなかった。ただ僕らのチームには、勝利に対する強いカルチャーがあるのは間違いない。王者になることが目標だけど、今年はそうなれなかった。

 でも、僕らには凄まじい勢いがあった。僕らは力を出し切って戦った。とても強いチームをいくつも倒した。

 そして“ラスボス”のレブロン率いるレイカーズに、少しだけおよばなかった。

(14) ミルウォーキーとのゲーム4から立ち直ったのと同じように、僕らはファイナルの敗戦からすでに立ち直っている。

 負けるのは辛い。それは間違いない。でも、僕らはオフシーズンまで引きずるようなチームじゃない。

 実際のところ、その正反対だ。僕らはオフシーズンを、ものすごく高いモチベーションを持って過ごした。

Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images
Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images

 僕らは、もし許されるのであれば、あの夜、すぐにまたレイカーズと試合をするようなチームだ。

 だから、短いオフシーズンで開幕を迎えることがどう影響するか、準備ができているのかと聞かれるけれど、言うまでもない。戦う準備ができていることはわかっている。

 昨シーズンが終わった直後から戦う準備ができていたのだから、準備ができているに決まっている。

 みんな、同じ思いでプレーしているから、準備できていないわけがない。

 彼らが僕らを倒した。おめでとう。でも、もう終わったことだ。

 さぁ、もう1回やろうじゃないか。

タイラー・ヒーロー

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