To My BayStars Family

The Asahi Shimbun via Getty

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僕が好きな横浜のファンについて話をさせてもらいたい。

彼にきちんとした形で会ったことは一度もない。だから、彼の名前さえ知らない。僕は彼のことを “ポスター男” 、もしくは “ミスター・ポスター” と呼んでいる。

彼については、本当になんと言っていいのかわからない。それくらい...... 最高の男なんだ。

彼がどれだけ最高なのかを理解してもらうには、ちょっとした説明が必要だと思う。補足させてもらうと、僕の妻、ステファニーはモデルをやっている。たまに水着のモデルもしているんだ。

OK、例の男性...... ミスター・ポスターについても説明させてもらうよ。

いつだったか、彼は僕たちの試合を観戦しに来た時、非常に大きな画用紙を持って来た。彼の作品は両面で、ラミネート加工されたポスターだった。どちらが表か裏なのかは各々の見方次第だけれど、片面にはベイスターズのユニフォームを着た僕の大きな画像が貼られている。大きなポスターをわざわざ試合に持ってきてくれて、それを選手に見えるように掲げてくれるのだから、それだけで嬉しい。

ただ、彼の作品が最高な理由は、もう一つの面にある。

裏返すと、そこには水着姿の妻の大きな画像が貼ってあるんだ。

おそらく、妻がインスタグラムのストーリーに投稿した画像を引き伸ばして大きなポスターにしたもので、その反対側に僕の画像がある。

最高じゃないか!

彼自身もそのポスターをとても気に入ってくれている。僕を見つけるたびに、大はしゃぎしながらポスターを見せてくれるんだ。

そんなことが数年も続いている。実は、日本での1年目、ステファニーと僕は日本で暮らしていて、彼女が試合を観戦しに球場に来た時、ミスターポスターは観客の中から妻を見つけて一緒に写真を撮ったことがあったんだ。もちろんポスターも一緒にね!

これだけは言える。彼は最高だよ! スタンドで彼を見かけるたびに大笑いさせてもらっている。

中には、自分の妻の画像を大きなポスターに貼り付けていることに怒る選手もいるかもしれない。僕はどうかって? そんなわけないじゃないか!

僕は妻を愛しているし、とても綺麗なんだ! 怒る必要なんてないだろ?

彼がポスターを僕に見せるように振ってくれるたびに、僕も手を振って、大きな声で返事するようにしている。いつだって、彼のおかげで笑顔になれる。

もちろん、ポスター男だけが素晴らしいわけではない。

日本中のベースボールファンは本当に素晴らしい!

これまでのキャリアでも出会ったことがないような存在だ。

きっと、こんな台詞は頻繁に耳にするだろうね。ただ言っているだけのように思われるかもしれないし、本心で言っているように聞こえないかもしれない。でもね、これだけは断言できる。僕は、うわべだけの言葉として言っているのではない。それにスポーツ界でよくある定型文として使っているわけでもない。本当にそう思っている。心からそう思う。

この国のファンが示してくれるサポートや前向きな姿勢、好きなチームや選手を応援する姿勢は、本当に唯一無二。アメリカ時代にヤンキースとレッドソックスのライバル対決を選手として経験し、熱烈なファンについて知る自分が言っているんだ。

素晴らしいサポート、チームに対する一途な気持ち、愛情は、僕にとって本当に大きい。母国を離れて、家族とも離れて知らない国で生活しているんだよ?

嘘でもなんでもなく、これは本当に大変なことなんだ。

Ed Zurga/Getty

日本行きを決断する前、NPBについて知っていることのほとんどはアメリカのチームメイトから聞いたことだけだった。ニューヨーク・ヤンキースに在籍していた時、僕はよく田中将大と話していた。彼からは、日本では練習強度やプレーの正確性に対する意識が高くて、進塁打やバントでの犠打の練習もすると教えてもらった。2019年にサンフランシスコでプレーしていた時には、中日ドラゴンズで活躍したアロンゾ・パウエルが打撃コーチで、彼からも色々と教えてもらった。

でも、それらは全てフィールド上でのこと。野球に関することだ。僕のように、ずっと野球をやってきた人間にとっては、大したことではない。大変なのは、野球以外の生活についてだ。

フィールド外での生活については何も知識がなかったから、その都度対処してきた。それで上手くやってこれたと思う。

日本での1年目、まだ新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は、ステファニーとも横浜で多くの時間を過ごせた。そのおかげで、こちらでの生活に慣れるのも楽だった。でも、パンデミックという状況になって、妻は何ヵ月も来日できなかった。そしてロックダウンになって行動が制限された時は辛かった。

成績は過去最高を記録できたけれど、フィールドを離れれば気持ちも落ち込んだ。

スタジアムの外での行動も限られていて、チームメートと出かけることもできず、新たな友人も作れずにいた。朝起きて球場に行って、試合をしてマンションに帰ってきて、一人でご飯を食べて、身体を休める、という生活だった。これの繰り返し。たまにPlayStationでアメリカの友人とゲームをしたり、FaceTimeで話をしていたけれど、僕が球場から家に戻る時間は向こうの夜中で、みんなは寝ている時間だったから、それも難しかった。家で一人で過ごすことが多かった。

そんな暮らしにはすぐに飽き飽きしてしまったよ!

正直に言うけれど、鬱ぎ込んでいた。ステファニーがそばにいなくて、家族も日本に来られなくて、言葉の壁もあって、遊びに行く友達もいなくて、精神的に苦しかった。落ち込んでいたんだ。これまでの人生で一番大変で、自分自身が試された時期だったと思う。

当時は、人とのコミュニケーション、対話の仕方がわからなくなってしまった感覚があった。もしかしたら、本来の自分ではなくなってしまったのではないかと思って不安にも駆られた。

色々なことが重なって(ステファニーが送ってくれたスナック入りの仕送りの存在はとても大きかった!)自分を保つことができたし、最終的に気持ちも楽になった。その中でも本当に大きな存在だったのは、僕たちのファン。パンデミックの状況が改善するようになって、スタジアムに観客が戻った。そのおかげで、大好きな試合を最高のファンの前でプレーできて、楽しい気持ちや幸せを噛み締めることができた。

ベイスターズファンのみんな、僕はみんなのおかげで元気になれたし、頑張ることができた。

みんなのチームに対する気持ちとエネルギーを毎試合で感じられたよ。応援や励ましの声を耳にしていたし、みんなが1球目から試合終了の瞬間まで試合に集中しきっていたことに気が付いていた。そんな瞬間の一部になれてとても嬉しかった。みんなの情熱は僕を鼓舞してくれるんだ。

外出している時にもファンの存在に気がつくようになったのは、このおかげでもある。僕は感謝の気持ちとして、ファンのみんなに御礼を伝えている。2021シーズン中はファンのみんなと交流する機会が極めて限られていた。球団関係者もルールを順守するように注意していて、できる限りファンを僕たちから遠ざけるようにしていた。

それが彼らの仕事。当然のこと。それはわかっている。

けれど、どうしても我慢できない時もある。駅でファンのみんなが僕たちと交流するため、写真撮影やサインをもらうために列を作ってくれていることがある。

ファンを無視することなんてできない。わかるだろう?

だから、球団担当者が見ていない隙に、子供が持っているボールにサインしたり、セルフィーを撮影しようとしたり、そういうことはやろうと思う。

ここでの意思表示でお咎めを受けないことを願うよ。本当にそう思っているんだ。告げ口だけはしないでくれよ。 僕はプレーしないといけない。チームを離れるわけにはいかないんだ。

今後数年、ベイスターズの一員としてやらなくてはいけない仕事が待っているから。

これまで受けた好意、そして横浜に恩返しする時がきた。最高の恩返しの方法はわかっている。

タイラー・オースティン

4シーズン目を迎えた今、このチーム、そして横浜に定着できているのは嬉しい気持ちになる。

僕は本当にこの街が大好きだ。日常が取り戻されるのが待ち遠しい。そうなったら、この街の魅力をもっと体験できる。これまでは定番の人気スポットに限定されてしまっていた。焼肉、一風堂、球場の近くにあるお気に入りのバーガー店などなど。状況が改善されたら、もっと街を探索して、横浜を特別な街にしているあらゆる物を体験したい。

もちろん、この街が本当に特別な最大の理由は、人にある。

横浜の人たちは非常にフレンドリーで、優しい。最初に来日した時、ステファニーが他の選手の妻と一緒に観光に出かけた時のことをよく覚えている。2人が道に迷ってしまって、駅でどうしたらいいか困り果てていた時のことだ。一人の女性が通りかかって、彼女たちが困っているとわかった時、立ち止まって助けてくれた。その女性は逆方向に向かっていたのに、彼女たちの話を聞いて、2人が行きたかった駅まで一緒に電車に乗って行ってくれたんだ。その駅で降りて、どの電車に乗ればいいかまで教えてくれて、立ち去ったらしい。

こんなこと、信じられるかい?

これほどまでに他人を思いやって、優しくしてくれる。妻も僕も、このことは絶対に忘れない。この話は、僕たちが横浜が大好きな理由の一つだ。

これまで受けた好意、そして横浜に恩返しする時がきた。最高の恩返しの方法はわかっている。チームの勝利のため、身を粉にしてプレーする。ユニフォームが泥だらけになるまでやって、とにかく食らいついて全力でプレーする。

Kyodo News/Getty

みんなも知っての通り、僕は度が過ぎるくらい全力でやるタイプだ。このやり方しか知らない。勝つために必要なことなら何だってやる。全力でプレーすることがなにより好きなんだ。

だから、試合でのプレーが待ち遠しかったよ。ウチには素晴らしい選手が揃っている。ベイスターズには、成長して、頭角を現したばかりの若手も多い。全てが順調に運べば、今後数年優勝を狙えるだけの力があるチームだと信じている。

これからが楽しみだね。

みんなで。一つになって戦う。

きっと、とてつもないことになる。

そうしたら、ミスター・ポスターは大騒ぎするだろうね!

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